テイグエン地方の少数民族にとっての酒器の重要性

(VOVWORLD) - 中部高原地帯テイグエン地方に住む少数民族の人々にとって、酒を入れる酒器は精神的な意味合いが深く、重要な役割を担っています。酒器は日常的に使う道具以上のもので、神への供物、結婚の贈答品としても用いられ、さらには家族の富裕さや地位を示す象徴ともなっているのです。
テイグエン地方の少数民族にとっての酒器の重要性 - ảnh 1テイグエン地方の各少数民族が大切にしている酒器

この地方に住むムノン族、エデ族、マ族などでは、酒器をそれぞれ「ヤン」「チェー」「ドゥラップ」や「ジャン」と呼んでいます。多種多様な酒器には、固有の名前が付けられています。その名前は、酒器の色、模様、形状、あるいは彫刻された動物に由来しています。高価な酒器の場合、所有者や一族の名前、関連する出来事から名付けることもあります。酒器は概して、丸い口、大きく膨らんだ胴体、そして底に向かって細くなる形状で、粘土を材料に高温で焼成されたものが一般的です。施釉されているものと、無釉のままのものがあります。

テイグエン地方の人々は、酒器を最も価値の高い所有物と見なしてきました。そのため、できる限り多くの酒器を家に収納し保管してきました。一族に酒器が多数あれば、その家の富裕さと権力が示されるためです。中には数百個ものコレクションを誇る家庭さえあるほどです。ベトナム民族学博物館副館長のブイ・ゴック・クアン博士は、酒器はテイグエン地方の家庭に尊敬と富をもたらす大切な品であると述べ、次のように語りました。 

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「昔は非常に貴重なものとされ、家族で大切に保管し、注意深く維持管理されていました。家の隅に置かれ、縄で慎重に縛られていたのです」

この地方の酒器は形状や装飾が多様で、様々な種類が存在します。一般的な酒器は茶色や濃い黄色で、無地か単純な模様が施されているのが普通です。一方、神への供物として使う酒器は希少で、本体に伝説の生物や植物の形が精緻に彫られ、虎のお守りのような装飾が付けられているものもあります。 

テイグエン地方の少数民族にとっての酒器の重要性 - ảnh 2

ハノイ近郊にあるテーマパーク「ベトナム各民族文化観光村」のバナ族責任者ディン・プリー氏によりますと、かつてはテイグエン地方の少数民族が多数の酒器を製作していました。酒器作りには、適した土の選別、窯の設営、神への報告の儀式など、様々な工程を経る必要があり、職人が一つ一つ丁寧に仕上げていったそうです。ディン・プリー氏の話です。

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「昔は、人々が自ら土を選んで酒器を作っていました。入手できる土に合わせて酒器を作り、家庭の状況に合わせてサイズを決めていたのです。現在は酒器を作る人が減り、主に購入するようになりました」

さらに、テイグエン地方には非常にユニークな酒器もあり、人気が高いそうです。それは「母が子を抱いている形」の酒器で、細長い形状の上に小さな酒器が乗っているものだといいます。先ほどのブイ・ゴック・クアン博士は次のように説明しています。

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「この酒器は、普通の酒器の上に小さい酒器が載っているものです。まるで母が子供を抱いているように見えるのです」

この特別な酒器は、高さ10〜15cmほどの小さな酒器が大きな酒器の口に取り付けられた設計になっています。大小の酒器は内部でつながっており、同じ龍の模様などが施されています。大きな酒器には最大4つの小さな酒器が取り付けられ、吸い口の管を取り付けられるよう突起がついています。ブイ・ゴック・クアン博士はさらに説明しています。 

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「この酒器には、家族の幸せを願う意味合いがあり、女性専用のものなのです。家庭が平和なときは用いられず、家に置くこともありません。代わりに畑の片隅や森の中に置かれ、主婦だけがその場所を知っているのです」 

このように、家族の幸せを祈願する特別な酒器をはじめ、テイグエン地方の少数民族の人々にとって酒器は先祖から受け継がれた大切な存在です。毎年、各世帯で酒器を祀る儀式が行われ、酒やおこわなどの供物を捧げ、家族と共同体の平安と幸福を祈ります。

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